記載要件

[2] 記載要件

(1) 明細書および特許請求の範囲の意義

特許制度は、新しい技術を開発し、それを公開した者に対し、一定期間、一定条件下に特許権という独占権を付与することにより発明の保護を図り、他方、第三者に対しては、この公開により発明の技術内容を知らしめて、その発明を利用する機会を与えるものである。
そして、発明の保護および利用は、発明の技術的内容を公開するための技術文献および特許発明の技術的範囲を明示する権利書としての使命を持つ明細書、特許請求の範囲および図面を介してなされることになる(特許・実用新案審査基準)。

(2) 特許請求の範囲の記載要件(特許法第36条6項各号)

(ア) 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること(同項第1号)
発明の詳細な説明(明細書に記載すべき項目の一つ) に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば、公開していない発明について権利を請求することになるため、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない。

(イ) 特許を受けようとする発明が明確であること(同項第2号)
特許請求の範囲の記載は、これに基づいて新規性・進歩性等の特許要件の判断がなされ、これに基づいて特許発明の技術的範囲が定められるという点において重要な意義を有するため、一の請求項から発明が明確に把握されることが必要である。

(ウ) 請求項ごとの記載が簡潔であること(同項第3号)
請求項の記載は、新規性・進歩性等の特許要件や記載要件の判断対象である請求項に係る発明を認定し、特許発明の技術的範囲を明示する権利書としての使命を担保するものであるため、明確であることに加え、第三者がより理解しやすいように簡潔な記載とすることが適切である。

(エ) その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること(同項第4号)
特許法第36条第6項第4号の経済産業省令で定めるところによる特許請求の範囲の記載は、次の各号に定めるとおりである。

  • 請求項ごとに行を改め、一の番号を付して記載しなければならない。
  • 請求項に付す番号は、記載する順序により連続番号としなければならない。
  • 請求項の記載における他の請求項の引用は、その請求項に付した番号によりしなければならない。
  • 他の請求項を引用して請求項を記載するときは、その請求項は引用する請求項より前に記載してはならない。

 

(3) 発明の詳細な説明の記載要件(特許法第36条4項各号)

(ア) 実施可能要件(同項第1号)
発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野において研究開発(文献解析、実験、分析、製造等を含む)のための通常の技術的手段を用い、通常の創作能力を発揮できる者(当業者) が、明細書および図面に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、請求項に係る発明を実施することができる程度に記載しなければならない。
例えば、どのように実施するかを発見するために、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるときには、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないこととなる。

(イ) 先行技術文献情報開示要件(同項第2号)
先行技術文献情報開示要件は、文献公知発明(特許法第29条第1項第3号に掲げる発明)のうち、特許を受けようとする者(出願人)が特許出願の時に特許を受けようとする発明に関連する発明を知っている場合には、その関連する発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を発明の詳細な説明に記載しなければならない旨を規定したものである。

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