拒絶理由通知に対する応答

[6] 拒絶理由通知に対する応答

(1) 事前検討

上述した特許要件を満たしていない発明や記載要件を満たしていない特許出願が審査されると、審査官から拒絶理由通知が示されることになる (特許法第50条)。
そのような場合、権利化を図る観点から以下の対応を取ることになるが、その前提として、拒絶理由の妥当性 (引用文献の指摘箇所、論理構成など) について十分に検討する必要がある。

<拒絶理由通知の種類>

(最初の拒絶理由通知)
原則として、出願人が最初に受ける通知を「最初の拒絶理由通知」というが、2回目以降に受ける通知であっても、拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要となったものでない拒絶理由を通知する場合は「最初の拒絶理由通知」となる。

(最後の拒絶理由通知)
原則として、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するもの「最後の拒絶理由通知」をいう。

(2) 意見書の提出

上記検討の結果、審査官の認定に誤りがあると判断した場合には、意見書を提出し、審査官の心証を覆すための反論をすることができる。
また、上記検討の結果、審査官の認定に一定の妥当性があるものの後述する手続補正後の内容で権利化することが可能であると判断した場合には、意見書とともに手続補正書を提出し、手続補正後の内容が拒絶理由を有していない旨を意見書において説明することもできる。

(3) 手続補正書の提出

(ア) 補正
出願の時点で、記載不備のない明細書、先行技術との関係で広狭のない特許請求の範囲を提出することは、実際上困難なことであり、出願人にその不備を補正する機会が与えられないとすれば、出願人にとっては酷な取扱いとなる。
一方、この補正を無制限に認めるとすれば、出願時に明細書に存在していなかった技術的事項を加えることも可能になり、先願主義の原則 (特許法第39条) に反することになる。
そこで、特許法は、一定の制限を設けて、明細書、特許請求の範囲または図面の補正を認めて (特許法第17条の2)。

(イ) 補正の制限 (認められない補正)

  • 新規事項を追加する補正 (同条第3項)
  • 発明の特別の技術的特徴を変更する補正 (同条第4項)
  • 最後の拒絶理由通知 (注1) に応答する場合において、特許請求の範囲についてする補正が、①請求項の削除、②特許請求の範囲の限定的減縮、③誤記訂正、④ (拒絶の理由に示す事項についてする) 明りょうでない記載の釈明を目的としない補正に該当する場合 (同条第5項各号)
  • 最後の拒絶理由通知 (注1) に応答する場合において、補正後の特許請求の範囲に記載された発明が独立して特許を受けられない補正 (同条第6項)
    (注1) ここでいう最後の拒絶理由通知には、 (分割出願において) 最初の拒絶理由通知と併せて特許法第50条の2の通知 (既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知) を受けた場合も含まれる。

 

(4) 分割出願

分割出願とは、二以上の発明を含む特許出願の一部を、新たな特許出願として出願することを認めるものである (特許法第44条)。

通常、特許出願が発明の単一性 (特許法第37条) を満たさない発明を含む場合や、特許請求の範囲に記載されていないが明細書または図面に記載されている発明を含む場合に、これらの発明について分割出願を行うことができる。

一方、早期権利化の観点から、拒絶理由を有していない請求項に係る発明について本出願 (親出願) に残し、拒絶理由を有している請求項に係る発明 (通常は上位概念に相当する発明) を分割出願 (子出願) して権利化を図ったり、補正の制限 (特許法17条の2第4項および第5項) により補正することができない発明を分割出願したりすることができる。

なお、補正の制限のうち特許法17条の2第5項の規定による制限を回避するためにする分割出願は、特許法第50条の2の通知 (既に通知された拒絶理由と同一である旨の通知) を受けた場合、最初の拒絶理由通知に対応する補正であっても同項の規定による制限を受けるため (特許法第17条の2第5項かっこ書) 、分割出願と同時か審査請求の時までに予め所望の補正をしておくことが望ましい。

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